オープニングで配布されたパンフレット(本人翻訳)
アーチ
私はアーチが好きなのです。門も窓もドアもトンネルも橋も、アーチはみな、違う空間との区切りの役割を果たしています。アーチの下をくぐること、またはその向こう側を眺めるのはただ単にわくわくするだけでなく、移動という行為を意識させることにもなるのです。
しかし、建築技術の向上と速度の重視によって、この歴史あるアーチは残念ながら街から姿を消していっています。ゲント駅の美しい二重アーチの通路が、近々取り壊されコンクリートの天井になってしまうこともその一例です。もし私たちの身の周りからアーチが消えてしまえば、人々は角々しく冷たい考え方ばかり持つようになってしまうのではないでしょうか。
ですから私は、このBoerenhol通路の入口がアーチ状であることを最初に発見したとき、とても嬉しかったのです。通路の中まで、このアーチを延長してその向こうに楽園を描こうと思いつきました、私の好きな噴水と一緒に。(今回は、実在する市場の噴水。)
植物の育つ力も、噴水から吹き出る水も、描くのは孤の形です。私はその美しさを見るとき、言いようもない感動に包まれます。私の描いた3つのアーチは、通りすがる人全てに対して開いています。そして、足を止める時間のある人には、安らぎとよろこびに満ちた庭を見せてくれるでしょう。
タイトル「禁じられた楽園」の「禁じられた (verboden) 」の部分は、この通路に昔からあった「ションベン禁止 (verboden te wateren) 」の標識がもとになっています。私はそのおかしな標識が気に入ったのです。といっても、作品の中で充分に水 (water) が吹き出ているので、もう誰もそこで用を足す (wateren) ことがないといいのですが。
人々の反応
ここを綺麗にするのかい?
まあ素敵!綺麗だわ!
おめでとう!これからも、頑張ってね。
で、完成した?まだできないの?いつ完成するんだい?
一体もうどのくらいやってるの?どのぐらい進んだか、見にきたのよ。
なんて膨大な作業!なんて辛抱強い!なんて細かい仕事!
うん、いい調子だな!大丈夫だ!
線からはみ出ないように塗れよ!
噴水だって?そんな、もっとモダンなテーマを選べよ!あんた、ちょっとは芸術的なのかい?
仕事は何?これが仕事?本当に、画家なの?
器用ねえ。よく手が震えないのね!
そこの美術高校から来たのかい?教育を受けたのかい?
なんの絵の具を使ってるんですか。まずは下絵を描いたの?
こんなうまい画家、ボク見たことない!
見てごらん、あの女の子が絵を描いているよ、きれいねえ。あのムスメったら、まだ描いとる。
ああ、なんて落ち着くんだ。心と魂のこもった作品だって、一目でわかるよ。
まあ、きれいになったこと!真っ白い壁よりずっといいぞ!ここは昔、臭くてねぇ。
ここは日陰でいいわねぇ。
芸術!
で、これはどういう意味?
こないだ見たとき、つまんないって思ったんだ、でもこれから色を塗るんだろ?
破壊者が家にこもってるといいんだがなぁ。
みんなが大切にしてくれるといいんだけどねぇ。
誰も落書きしないといいのだけれど。
だって、知ってるでしょこの辺の人々のこと。心配だわ。
思ったんだが、プラスチック板を被せたらどうだい?
あんたこれ、許可とってんの?これ、ボランティア、それとも給料でるの?好きでやってんの?
ねえ、うちの壁にも描きにこない?せっかくここにいるんだから!時給いくら?
いくらもらってんの、7000ユーロ?金がかかるなあこういうのは、これは市の税金なんだぞ。数千ユーロもらってるんだろう?
(臭うのでゴミ袋を少し遠くに置いてください。)臭いだと?なんで俺ん家で臭ってよくて、お前んとこじゃいけねえんだ、あ?
この枝は、少し太すぎますね。これでは、ほら、根元から折れてしまいます。そしてこの遠近法は、ちょっとおかしいな。
なんだこの雑な仕事、俺の方がうまいぜ。おい、筆貸してみろ。嫌なのか?じゃあやって見せろよ。
僕も壁なんてゆうに50は塗ったことがあるよ!自分ちの壁全部ね!ハッハッハ!
どっから来たの?ベルギー出身(じゃないでしょ)?ああ、日本!なるほど、君の作品には日本の影響が感じられる!
国籍は?おいおい、なんでここに来たんだ?ベルギーは腐っている。フランドル、それが俺の誇りさ。
私の妻は6年前に亡くなりました。癌でした。あなたのように小さな、タイ人でした。きれいな人でした…
あんた何歳?結婚してるの?俺は11歳、彼女ならいるぜ。
どうして絵をカバーしてるんだ?(だれかが絵の上でタバコを消したんです。)ああ、クソ馬鹿野郎め!
これは自画像かな?僕にはわかるぞ!
なんでこの女は裸なんだ?おっと、わしゃこのままでもいいんだがね!ハッハッハ!
水着着せてあげなよ!ビキニ!おいおい、ここを通るイスラム教徒はどうすりゃいいってんだい?
ブドウの収穫期だ!ねえこのイチゴ食べていい?見て、鳥が魚を捕まえてる!
最後の葉っぱが一番重い・・・(注:終わりが近づくほど作業は辛くなってくるという意味のことわざのもじり。)
尊敬するぜ、なあねえちゃん、俺の顔にタトゥー彫ってくんねえか?
なんか飲む?コーラ、ジュース?俺のおごりだ!
天使のような辛抱強さだなぁ、男にもそんな優しいのかい?ハッハッハ!
ねえ、僕の弟見なかった?
マルボル(市場の噴水の名前)、魚(この市には魚が重要な伝統行事がある)… これぞGeraardsbergen市だ!
ここにチャペル、そこにションベン小僧(この市には、Brusselよりも古いと言われる像がある)そしてあそこにmattentaart (市の歴史ある焼き菓子の名前)を乗せた皿をおけばもう完璧じゃ!
ああ、(作品は完成していないけど)もうすでに、名誉で胸がはちきれそうさ!これは我らが市にとって、なんて重要な芸術作品となるのだろう!
あぁクララ、あなたは世界一の芸術家になるわ!